軋むように車体が動き出して、ゆるく流れる景色を見ていた。ただ、意識のどこかで誰かが何かを叩いていて、?。視界の端に、鉄道の線路が目に入ってやっと、気がついた。逆方向。
ええい。儘よ。このまま、ゆけるところに、ゆきましょう。
トラムの線路は、複線になっている、何処かで引き返したくなれば、逆向きに乗り換えればいいのだ。(一度、市内バスでそれをして、真冬の東ベルリンで、道に迷ったことがある。一方通行の路地裏で、帰りのバスの停留所が、どうしても見つからなかった。)
路面電車は、僅かに傾いたまま、「3月8日通り」をどんどん進む。見知らぬ景色、細い路地。日干し煉瓦の家々、淡い黄色に、トタンの屋根、ざくろ、葡萄の 木々、たわわに実った重そうな実の、深い色合い。埃っぽい路地、軒先の、洗濯物。角には小間ものを売っている小さな商店と、チャイハナ。
ごとん、と停留所に、止まる。
降りる機会を見失ったまま、立ち上がれずに、外を見ていた。自分の場所ではない、住宅地のまんなか。皆は、めいめい行く先を、待っている。
暫くして。
ふと、ひらけた大きな通りに出る。バザールがゆっくりとこちらに近づいてくる。丸屋根、テントの色とりどり、手押しの荷台を押した人の列。やっと、立ち上がって、そのまま降りた。(ここはいったい何処だろう。私の持っている小さい地図からは、もう外れてしまっている。)
大きなカメラを出して(アンティーク、のような銀塩のニコン)、速度を緩めて、歩く。古いモザイクのタイルがついた団地の写真を撮っていて(集合住宅がす きなのだ)、呼び止められる。ジェーブシュカ、ここ、買うの?ううん、ただちょっと、興味があって。ここはいいよ、バザールも隣だし、バスもトラムも来る し、お買い得だと思うよ。あはは。ええとね、興味、ってそっちじゃなくて、タイルが、きれいだなあと思って。相手はちょっと不思議そうな顔をする。でも にっこりして、明日はお休みだね、ハイードだ、と言う。断食明けの、おまつり。よい休日を、わたしもにっこりする。
そして、「予定通り」、逆向きのトラムで、「街」に戻る。
ええい。儘よ。このまま、ゆけるところに、ゆきましょう。
トラムの線路は、複線になっている、何処かで引き返したくなれば、逆向きに乗り換えればいいのだ。(一度、市内バスでそれをして、真冬の東ベルリンで、道に迷ったことがある。一方通行の路地裏で、帰りのバスの停留所が、どうしても見つからなかった。)
路面電車は、僅かに傾いたまま、「3月8日通り」をどんどん進む。見知らぬ景色、細い路地。日干し煉瓦の家々、淡い黄色に、トタンの屋根、ざくろ、葡萄の 木々、たわわに実った重そうな実の、深い色合い。埃っぽい路地、軒先の、洗濯物。角には小間ものを売っている小さな商店と、チャイハナ。
ごとん、と停留所に、止まる。
降りる機会を見失ったまま、立ち上がれずに、外を見ていた。自分の場所ではない、住宅地のまんなか。皆は、めいめい行く先を、待っている。
暫くして。
ふと、ひらけた大きな通りに出る。バザールがゆっくりとこちらに近づいてくる。丸屋根、テントの色とりどり、手押しの荷台を押した人の列。やっと、立ち上がって、そのまま降りた。(ここはいったい何処だろう。私の持っている小さい地図からは、もう外れてしまっている。)
大きなカメラを出して(アンティーク、のような銀塩のニコン)、速度を緩めて、歩く。古いモザイクのタイルがついた団地の写真を撮っていて(集合住宅がす きなのだ)、呼び止められる。ジェーブシュカ、ここ、買うの?ううん、ただちょっと、興味があって。ここはいいよ、バザールも隣だし、バスもトラムも来る し、お買い得だと思うよ。あはは。ええとね、興味、ってそっちじゃなくて、タイルが、きれいだなあと思って。相手はちょっと不思議そうな顔をする。でも にっこりして、明日はお休みだね、ハイードだ、と言う。断食明けの、おまつり。よい休日を、わたしもにっこりする。
そして、「予定通り」、逆向きのトラムで、「街」に戻る。
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